2011年2月25日金曜日

第1回関西ブロック合同管制技術交流会報告

日時:2011年1月28日(金)
場所:関西空港事務所 1階 講堂

「感想」
関西進入管制区内には多くの空港がある。
関西進入管制区の周辺にも多くの空港がある。
関西進入管制区内及び周辺の空港を離着陸する航空機が関西進入管制区を多数飛行しており、混雑した空域である。
各空港の出発経路・到着経路がいろんな所で競合しており、高度制限を付ける等して間隔を保っている。
VFR機はTCAアドバイザリーやレーダーアドバイザリーを受けて、IFR機の経路と競合しないよう注意が必要である。


「開会あいさつ」
関西空港事務所 銭亀隆英先任航空管制官

管制技術交流会をこれまで各空港事務所で行っていたが、全国を6ブロックに分けて行うようになった。
関西ブロックは関西・大阪・八尾・神戸・高松・岡山・高知・航保大。
高知進入管制区が今年関西進入管制区に統合される。
来年は高松も。
統合後も同様なサービスを提供できるよう努力する。
交流会の目的は管制官とパイロット・運航者の意思疎通。


「航空管制の安全性向上について」
日本ヒューマンファクター研究所 本江彰研究主幹(元JAL機長)

日本航空機同士のニアミス事故の最高裁判決で裁判長は「本件は、そもそも、被告人両名が航空管制官として緊張感をもって、意識を集中して仕事をしていれば、起こりえなかった事態である」としている。
実際は逆で緊張しすぎるとエラーが発生する。
平常時もエラーは普通に発生する。
最高裁は人間を理解しておらず、ヒューマンエラーの捕らえ方を根本的に誤っている。
エラーは人間の特性で、懲罰では直らない。
情報を開示し分析することが再発防止に繋がる。
当時TCAS RAが発生した時の管制官の対応は決まっていなかった。
組織事故という視点が欠落している。
業務上過失致傷罪が成立するには、判断や行為によってもたらされる事態について予見することが可能であったかが重要。
この事例で結果予見は無理である。

管制保安部の依頼で発足した管制アドバイザリーチームが、伊丹滑走路誤進入等を調査。
柳田邦男座長はまず「誰かが気付きチェーンが切られた成功例ととらえよう。この防護壁が将来も続くか、防護壁をもう少し増やした方が良いか検討しよう」と。
調査よりエラーは人と人のコミュニケーションの中で発生していること、音声通信によるコミュニケーションの脆弱性等が分かった。
一般的エラーは注意喚起では防げず、エラーを引き起こすような組織要因に目を向ける必要がある。

気付きを褒める。
「安全第一」の標語だけではダメ。
上が安全を求めていることを具体化に伝えることが、現場の勇気に繋がる。
人間の行動7割が自動化。
見ているけど見えてない。
指差呼称は有意識化のひとつの方法。

全スレットの内1/4がATCに関するもの。
その内10%がエラーになった。
管制官とパイロットが相互にスレット理解することが必要。
パイロットのスレットがパイロットエラーに発展しATCスレットになる。
ATCスレットを防ぐにはパイロットに働きかけることが重要。


「関西空港における経路の遵守について」
関西空港事務所 水本亮一主幹航空管制官

関空は環境に優しい空港。
住居騒音の影響等を考え、努めて海上を飛行し、陸地上空を低高度で飛行しない。
大阪府・兵庫県・和歌山県の陸域上空ではベクターは行わない(一部(LILAC ARRIVALの北側、Y544の南側)除く)。
観測局が31ヶ所あり、騒音・経路・高度を測っている。
逸脱すれば報告書を作成する。
23時から6時の間はAIP RJBB AD2.20に記載のSIDのみ可(騒音軽減)。
交通安全・効率に加え、周辺環境に配慮し、約束を守り、真摯に向き合い、丁寧に説明することで、飛行可能な陸域エリアを拡大してきた。
経路・高度の遵守を(逸脱に注意を)。


「GBAS(衛星航法による精密進入着陸システム)の概要と開発動向」
独立行政法人電子航法研究所 福島荘之助研究員

GBAS(ジーバス)とは衛星を利用した進入着陸システム。
地上装置1式で複数の滑走路に複数の進入方式を設定できる。数十年後にはILSからGBASへ完全移行。
機上装置GLS(GNSS Landing System)は、B787に標準装備、B737NG・A320等にオプション。
2030年には旅客機の半数に装備が見込まれる。PFD表示・操縦ともILS同様。
アメリカ・ヨーロッパ・オーストラリアでCAT-Ⅰ評価中。

日本では電子航法研究所が96年からGBASを研究。
関空へGBASプロトタイプを設置し、今年2月から3月にかけ飛行実験を行う。


「質疑応答」

[関西空港関係]
運航者:北側から関西空港へ向う到着経路が遠い。関西コリドーを作ってはどうか?
管制官:大阪空港があるため難しい。陸地部を高い高度で来てから降ろすのもメリットがない。地元と経路の約束があり事務所としては難しい。
大阪局:対地元、騒音対策のことがある。

運航者:関西RWY24時、淡路VORあたりから200ktにスピードコントロールされると3~4分到着が遅れる。
管制官:先行機との間隔の関係がある。

運航者:関空のTAXIの経路がR→L-TWY→P-TWYと、離陸前の忙しい時にクランクが続く。海外では到着機は滑走路側、出発機はターミナル側が一般的である。
管制官:出発機をL-TWYに入れると、J4東の貨物エリアでプッシュバック機があると待つことになる等の理由で、P-TWYに入れた方が良い。

運航者:短いA-RWYを出発用、B RWYに着陸用にしている理由は?
管制官:場面の管制処理利便性(地上滑走距離。パラレルの数(A-RWY端は他機を追い越せるが、B RWYは追い越せない))。周辺上空の管制処理(RWY06R MAIKO FIVE DEPは2500ft以上の高度制限が付いていて、神戸出発機を1500に押さえたら1000ftの間隔で同時リリースできる。RWY06Lは2500FT以上の高度制限がないため、時差で出さざるを得ない。またKNE R-318にどこで乗るのかが決まっておらず、ヘビー機がゆっくり曲がると、神戸機とのレーダー間隔取りにくい。RWY24時、RWY24R出発機とLILAC ARRIVALが競合。RWY24R出発機とRWY24Lのミストアプローチが競合。RWY24RのVISUAL APPROACH機がGO AROUNDした場合、どこへ逃がすかが問題。270°でベクターすると次のVISUAL APPROACH機と競合等)。

[TCAアドバイザリー関係]
運航者:TCAアドバイザリー中の高度変更は通報が必要?
管制官:VFRの高度を指示する立場にないが知っておきたい。義務はないがVFR機同士も含めて管制間隔を取っていることが多い。TCAS RA防止、他の席との調整にも有用。

[大阪空港関係]
管制官:大阪空港はテールが10ktを超えない限りRWY32を使用。数年前はRWY14が2%あったが、現在はRWY32が99.1%。

運航者:大阪空港の管制官にとってILSとRNAVどちらが都合良い?
管制官:ILSの方が都合良い。RNAVは天気が悪いと32Lに振りにくいが、ILSからなら32L・32Rどちらでもいける。RWY32L到着機が5NMなら、出発着出せる。出発機がなければ32L、出発機があれば32Rに振れる。RWY32R対象機はパフォーマンスが許せば32Rをアクセプトしてほしい。そうすれば出発機を早く出せる。

運航者:OHDAI 13,000FTからショートベクター、MUGIE FL190からショートベクター、事前に知らせてほしい。
管制官:OHDAI 13,000FTが高いという認識はある。しかしOHDAIの東は12,000FTまでセントレアの空域。セントレアと調整し早めに降下させることがある。NATCH 11,000FTでACCからセントレアに移管される。セントレアRWY36の時はどんどん降ろすが、RWY18の時はまだ高い。

管制官:明らかに5分遅れる。高い方が良いか、低い方が良いか? 分かっているなら高いほうが燃費良い?
運航者:B767・B777はすぐ降下するが、B737-8は降りにくい。機体パフォーマンスを見ながら。


「レーダーシミュレーター体験」
関西空港事務所内に最新式レーダーのシミュレーターがある。
前席・後席に分かれていて、前席のレーダー画面には訓練生が座り飛行機をベクターする。
後席のレーダー画面には教官が座り訓練生がベクターする飛行機の諸元をシミュレーターに入力する。

シミュレーター体験(レーダーの管制官の体験)のため前席に着座。
大阪到着機、OHDAIから1機、南から2機という設定。
まずどの順番に降ろすかを決める。
その順番になるようベクターする(到着機を並べるためにベクターで使えるエリアは思うより狭かった)。
MVAを考慮しながら降ろす(金剛山付近はMVAまで降ろすとGPWSが鳴るため、直径数マイルの円が表示され、そこを避けるようにベクターする)。
MIDOHに近づいたら、アプローチクリアランスを出し、大阪タワーにコンタクトさせる。その時6NM間隔に並んでいるのが理想。
レーダー画面右のボタンを押せばMVAやFIX名を表示できるが、地名は表示されない。
土地勘のない管制官は地図帳を開いてその地名を探している(FIXで言えば管制官はすぐ分かる)。
ライン機はレーダー上をゆっくり動くが、3機をベクターしたり高度を降したりで、結構バタバタ。
そうしているとあっという間にMIDOH手前までやってきてしまう。
そこにIFRのルートを理解していないVFRがフラ~ッと割り込んできたら、私が管制官だったら「勘弁してよ」と思うはず。
またIFR機にからむ場所で撮影時、待たされるのも納得できたような気がする。
でも実際はラインの隙間を見つけてそこに撮影機を差し込もうと管制官が努力してくれていることを私たちは知っている。
管制官がプロの対応をしてくれているのだから、撮影機もプロの対応が必要だと思う(見やすい飛行要望書だとか、短い無線とか、無線を聞き逃さないとか、タイミングを逃さない飛行とか・・・)。

2011年2月1日火曜日

ASI-NETにドキッとしたこと教えてください

小型機航空安全情報ネットワーク"ASI-NET(アシネット)"の目的は、皆様の「ヒヤリ・ハット体験」を共有することにより、事故の未然防止を図ることにあります。
ASI-NETが目指すのは「失敗を罰する文化」ではなく、「失敗に学ぶ文化」です。
報告によりあなたの貴重な体験報告が多くのパイロットを救うかもしれないし、またあなたは自分ひとりの体験の何十倍もの情報を得ることもできます。
皆様の事例報告を積極的にASI-NETへお寄せください。
なお航空局はASI-NET参加組織ではなく、提供された情報に直接アクセスすることや、ASI-NETに情報の提供を求めることはありません。
もし航空局が何らかの経緯により情報を知ったとしても、その情報のみにより行政処分を行うことはありません。
ASI-NETホームページ http://asi-net.atec.or.jp/

新滑走路標識へ順次変更中

航空法施行規則が改定され、接地点標識が廃止、目標点標識(エーミングポイントマーキング)が新設、接地帯標識と停止位置案内標識が変更されることになりました。
平成23年7月までに順次変更されることになっています。

図は長さが2400m以上の滑走路の場合の新標識です。

新標識の詳細はAIC028/08をご覧ください。

ASI-NET FEED BACK No.2010-003

小型機航空安全情報ネットワーク(ASI-NET)の刊行物FEED BACK No.2010-003が発行されました。内容は・・・

・習慣に隠れる盲点!
・ヘリコプターと小型飛行機との接近
・航法援助施設上空でのニアミス
・荒川上空でニアミス
・あと10分着陸が遅かったら
・芦ノ湖で天候急変「濃霧」 他

詳細はこちらでご覧いただけます。

航空保安業務処理規程第5管制業務処理規程の一部改正について

平成23年1月13日に飛行方式設定基準(平成18年7月7日国空制第111号)が改正されることに伴い、福井空港及び沖永良部空港にBasic-RNP1 による標準計器出発方式並びに旭川空港にRNAV 進入方式が設定されることを受け、航空保安業務処理規程第5管制業務処理規程の一部が改正されました。

航空保安業務処理規程第5管制業務処理規程の一部改正について
Basic RNP1資料
平成22 年度航空保安業務処理規程第5管制業務処理規程改正 新旧対照表(平成23 年1 月13 日施行)

対空援助業務を実施する空港における出発待機/解除の指示に係る手続きついて(通知)

対空援助業務を実施する空港(RADIO/REMOTE)における、出発機への管制承認の発出に係る手続きについて、通知を受けました。

��.内 容
出発機に対し、「HOLD FOR RELEASE.」の用語を使用して地上待機させた後、当該指示を取り消す場合は、次の用語が使用される。
★出発を許可します。
RELEASED FOR DEPARTURE.
[例] ATC clears J-Air 2264 released for departure.

��.適 用 日
平成23年2月1日

対空援助業務を実施する空港における出発待機/解除の指示に係る手続きについて(通知)